元気を与え、与えられ。
心やさしき医療従事者として活躍する日々。


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Sさん 東京都在住 20歳代後半 血友病B(重症)

写真はイメージです。

  • プロフィール

医療系の大学を3年前に卒業し、現在は放射線技師として都内の病院に勤務するSさん。信頼できる仲間と連携しながら、立派にその業務をこなしています。休日は趣味である街歩きを満喫。仕事とプライベート、ともに充実した日々を過ごされています。

 

*2025年7月取材

時が経つに連れ、できることが増えています!

 

大学に入ってからは週1回の定期補充療法へ、さらに直近では毎日の皮下注射へと、治療方法を予防的な手法に切り替えています。そんななかで感じるのは、どんどんできることが増えていっていることです。

主治医の先生から「適度に筋肉をつけたほうが出血リスクを下げられる」と聞いたこともあり、学生のときからウォーキングや筋トレなんかもするようになりました。今は仕事でもそれなりに体力を使いますし、最近は休日の街歩きが一番の趣味になっているほどです。ほとんどの運動を控えていた子どもの頃がウソだったみたいに体を動かしています。

憧れの仕事に就き、休日は好きな街をたくさん歩いて、人生を満喫できています!

 

 

苦手だった注射を1度だけ自ら申し出た


幼少期は、まわりの人もみんな出血が止まらないときは病院に行くものだと思っていました。それが自分だけだとわかったのは、小学2年生の頃。親からは外遊びを控えたほうがいいと伝えられました。友達と野球やサッカーをするのが好きだったのでショックでしたね。

昔から注射が大の苦手でした。出血や痛みを感じても、毎回病院に行くのをギリギリまで我慢していたくらいです。おかげで1週間点滴治療しなければいけない、なんてこともありました。本当、我慢はよくないです。

運動はずっと控えていましたが、小学校最後の運動会には参加しました。主治医の先生に相談して、事前に注射を打ったんです。友達との楽しい思い出を作りたかったので、そのときだけは自ら注射を志願しましたね。

 


急な痛みが出なくなった&どこでも使えて便利!


大学生の頃からは定期補充療法にして、週1で親に静脈注射をしてもらっていました。現在、就職、上京して1人暮らしを始めて3年目。いつまでも親に頼っていられないと思っていたところ、主治医の先生から「皮下注射できる薬が出たよ」と教えてもらい、数か月前から1日1回の皮下注射に切り替えています。

最初は薬が変わることを心配していましたが、今では多くのメリットを感じています。以前は夜平気でも朝起きると関節が曲げられないほど痛い、なんてこともありましたが、そんな急な痛みが出ることがなくなりました。注射自体の痛みも減ったと感じます。薬を室温で保管し、携帯ができるので、外出先などどこでも注射ができるところもすごく便利です。今までは週1回の定期補充療法をするためにわざわざ実家に帰っていたことを思うと、大きな進歩だと思います。

 

 

職場仲間のやさしいサポートに感謝


幼い頃から医療従事者にやさしくしてもらっていて、自分もそうやって人に喜んでもらえる仕事がしたいと思い、医療の道をめざしました。現在は放射線技師として、レントゲン写真の撮影や、その画像作成の業務に日々取り組んでいます。撮影の際は、患者さんを撮影台に移すといった力仕事が必要なときもあり、手を挟むなどのケガのリスクがあります。ただ、同じ職場の人には病気のことを伝えてあるので、いつもうまくサポートしてもらっています。やさしい人に囲まれて働けるのは幸せですし、サポートを受ける度、自分も誰かにやさしい人でいなければと思い直しています。

 

 

とある休みの日、街歩きで1万5千歩を記録!

 

趣味は街を歩くことです。1人で自由に歩きながら、カフェや雑貨屋などを見てまわります。もちろん痛みが出ないように細かく休憩しながらですが、先日は1日で1万5千歩も歩いていました。本当に自分は病気なんだっけと、一瞬疑いました(笑)。

よく行くお店の1つが、有楽町の「首里石鹸」です。職業柄、肌はきれいなほうがいいと思い、ケアには気を遣っています。ここの製品は、たとえば夜使って朝起きてもまだ肌が潤っている感じです。友人にも褒められたことがあります。お店は全国の主要都市にあるので、気になる方はぜひチェックしてみてください!

 

 

将来、塗り薬ができたらうれしい

 

幼少期はほとんど運動ができませんでしたが、今では1日1万歩以上歩けるようになりました。効果はもちろん利便性も含めて、今の薬が開発されて本当によかったと感じています。将来的には飲み薬や、出血で痛みがあるときに使える塗り薬なんかができて、治療の負担がより減ったらなおうれしいです。できるなら、やっぱり注射は避けたいので。

いつになるかはわかりませんが将来、家族で海外旅行に行ってみたいです。少ししか話せないのですが英語が好きなので、英語を使って現地の人と直接コミュニケーションをとりながら、違う国の文化にふれてみたいんです。また、これまで自分を支えてくれた親への感謝も、家族旅行をしたい理由の1つです。ぜひ旅先で「病気があっても普通に楽しめるでしょ?」と伝えたいですね。

 

 

   アクティブに生きる私の原動力


  元気をあげると、元気が返ってくる仕事!


勤務先にはいろいろな病気の人がいて、時折患者さんから「治療したくない」「生きるのが辛い」などという声を聞きます。そんなときには自分の病気のこと、それでも日々前向きに生きていることを伝えて、患者さんを元気づけます。話を聞いてくれて、きちんと自分の病気に向き合うようになった患者さんを見るとうれしいですし、こちらもまた元気をもらえた気になります。

医療従事者は、ただ治療などを施すだけでなく、逆にいろいろなものを与えてもらえる素晴らしい職業だと、あらためて感じています。多くの患者さんにとって、自分が幼少期に憧れたようなやさしい医療従事者になれていたらいいなと思います。

医師からのメッセージ


医療法人財団はるたか会 前田 浩利 先生

 

 

私とS君の出会いは25年前、彼が生後1カ月のときでした。当時勤務していた地方の中核病院で病棟当番だったある日、「先生、生後1カ月、脳出血の子が外来からあがってきます。」と看護師に言われ、緊張感をもって迎えたのがS君でした。ぐったりとして、処置台の上に横たわる彼に、必要な処置を行い、集中治療室に入院とし、血友病と診断して、血液製剤の補充などを行いました。結構重い出血だったので、後遺症を心配したのですが、幸い後遺症も残らず、数か月の入院後、S君は退院し、外来でのフォローになりました。20年以上前の血液製剤は、効果が不十分なこともあり、時々関節内出血があり、痛い想い、不自由な想いをさせたと思います。

それにもかかわらず、S君はとても気持ちの優しい青年に育ち、ある日の外来で、「先生、俺、放射線技師になろうと思う」と医療職への希望を伝えてくれました。苦痛の多かった医療の経験が彼にとって、決してマイナスではなく、患者さんを支える側になりたいという気持ちに、彼の優しさとたくましさを見せていただいたように感じてとてもうれしかったのを憶えています。

皮下注射になってから、S君の活動範囲は広がり、自立心と自信が強くなってきたように感じます。今では、2か月に1回になった外来で、放射線技師として、職場にもなじみ、だんだんとスキルを磨いている彼の話を聞くのは私の楽しみです。医療技術、薬品の進歩が彼にとって、また多くの患者さんにとって、益々その人生を豊かに意味深いものとすることを心から願っています。

 

 

※一部を除き、数字、組織名、所属、肩書等の情報は2025年12月時点の情報です。


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