日常生活における注意点

監修:東京医科大学 臨床検査医学分野 教授 天野 景裕 先生

すべての世代の血友病患者さんに共通する、日々のくらしと旅行で気をつけたいことをご紹介します。

家の中でできる工夫

血友病の治療は、出血を防いで血友病性関節症の発症・進行を抑えることが大きな目標です。そのために凝固因子製剤の定期補充療法が行われますが、普段の生活でも、関節への過度の負担を避けたり、転倒したときの衝撃を和らげたりする工夫を心がけておきましょう。
  • ・部屋の整理整頓を心がける。
  • ・家具の角にカバーをする。
    家具の角をカバーするスポンジなどはホームセンターで購入できます。

他にも、年代別に家の中でできる工夫をご紹介しております。

外出時の靴選び

外出時の靴選びも大切です。一口にウォーキングシューズといってもさまざまなデザインがありますが、ファッションや流行で選ばずに、機能性で選ぶようにしましょう。コツは、多少重たい靴でも、かかとのクッションが厚く、底が固くない靴を選ぶことです。
どうしても底が固い靴の場合は、中敷きを厚くするなどの工夫をします。

他にも、年代別に靴選びの工夫をご紹介しております。

食事

食事は、日頃から栄養のバランスをとり、規則正しくとる習慣が何より重要です。食生活の欧米化で、肥満や生活習慣病が問題となっています。高脂肪、高カロリーの食べ物を食べすぎれば肥満につながり、体重が骨や関節に余計な負担をかけます。

かと言って、極端なダイエットで体重が急激に落ちたとしても、身体の筋肉や水分が一時的に減少させるのは意味がありません。正しい食事療法と運動療法を組み合わせ、体脂肪を減少させることが大切なのです。

そのためには、適正なエネルギー量の範囲内で、栄養バランスの良い食事をとることです。まずは自分の「適正体重、適正エネルギー量」をチェックしてみましょう。

●肥満の判定と標準体重

肥満かどうかは、身長と体重からBMI(Body Mass Index)を求め判定します。
計算式は、
 BMI(Body Mass Index)=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
 標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22

日本肥満学会が決めた判定基準では、統計的に最も病気にかかりにくいBMI22を標準とし、25以上を肥満と定めています。

●適切なエネルギー摂取量

エネルギー摂取量は、年齢・性別・身体活動量・肥満度などを考慮して決定しますが、まずは標準体重と活動量から必要なエネルギーを計算して、一日の適正なエネルギー量を知りましょう。

計算式は、
 エネルギー摂取量(kcal)=標準体重(kg)×身体活動量(kcal)

活動別・標準体重1kg当りの一日に必要なエネルギーは、
 軽労作(デスクワークが主な人)・・・25~30kcal/kg
 普通の労作(立ち仕事が多い職業)・・・30~35kcal/kg
 重い労作(力仕事が多い職業)・・・35~kcal/kg

●正しいダイエットの基本

  • 1. エネルギーの摂りすぎを改めましょう
  • 2. 栄養のバランスが偏らないようにしましょう(毎食「主食・主菜・副菜」をそろえて)
  • 3. 1日3食、規則正しく食べましょう
  • 4. 「ながら食い」はやめましょう
  • 5. 3食ほぼ同じ量を食べましょう(夕食を食べすぎない)
  • 6. よく噛んでゆっくり食べましょう
  • 7. 夜遅く食べないようにしましょう

口腔ケア

口の中をケアして虫歯や歯周病を予防することは、口腔内出血の予防にもつながります。以下のように工夫しましょう。

  • ・1日2回の歯みがきとともに、デンタルフロスや口腔洗浄剤を使って、歯垢がたまらないようにしましょう。
  • ・毎度の食事以外にだらだらと何かを食べていると、口の中が長時間酸性になるので、虫歯ができやすくなります。間食は時間を決めてすることが大切です。
  • ・歯みがきをして出血し、さらなる出血を恐れてそこを磨かなくなると、歯周病が悪くなる悪循環になりかねません。歯みがきをしていて出血したときは、歯科を受診しましょう。
    ただし、出血傾向をもつ方が安全に歯科治療を受けるには、医師と歯科医師の密接な協力が必要です。歯科受診の前には必ず主治医に相談しましょう。
他にも、年代別に家の中でできる工夫をご紹介しております。

 

旅行

旅行や出張の計画を立てるときには、自分の体調や体力とスケジュールを検討し、日程や行程に無理がないかを確かめます。旅行ではつい無理をしがちになるので、そのことを念頭にスケジュールを検討するとよいでしょう。

注意したい点としては、例えば、次のようなことがあります。

  • ・関節の状態に気をつける
  • ・関節に負担がかかるような行動は避ける
  • ・出血の前兆に注意する
  • ・出血の前兆があったら、なるべく早く対処ができるか検討する
  • ・旅先で自己注射ができる場所があるか、チェックする
  • ・旅先に救急で受診できる病院があるか、チェックする

旅行先が海外の場合、一部の途上国や都市部以外の地域では、出血の処置、特に緊急の対処にとまどう可能性があります。また、地域によっては感染症に罹患するリスクが高いおそれもあります。渡航前にかかりつけの医師に相談し、普段使用している凝固因子製剤を携行する準備をしたり、旅行先でどのような製剤なら入手できるのかを知っておいたりするのもよいでしょう。自分専用の手袋や包帯、縫合糸などの滅菌済み医療用キットを用意しておくのもよいアイデアです。

●旅行・出張の準備チェックリスト

1)医療用品では □薬剤の予備 □クーラーボックスと冷却材
□注射に必要な器具 □市販薬
※気温の高い地域に行く場合や、寒冷地で溶解用液を凍らせないために必要なことがあります。
2)海外旅行では □予防接種(必要な予防接種の確認)
□英語または現地語の辞書または用語集
3)書類では □医師や医療機関の手紙 □健康保険証
□処方箋のコピー(お薬手帳) □旅行保険の情報(証書番号など)
□薬剤のラベル □輸注記録手帳(病名や受診医療機関、主治医の連絡先を記入しておく)
□緊急連絡先一覧の作成(必要事項の記入、携帯電話に電話番号を登録)
□目的地で救急受診できる医療機関リスト

 

 

※一部を除き、数字、組織名、所属、肩書等の情報は2024年10月時点の情報です。

JP24HRBD00015

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