運動について

監修:東京医科大学 臨床検査医学分野 教授 天野 景裕先生

血友病患者さんが楽しく安全にできるスポーツをピックアップしました。自分に合ったスポーツをみつけて、無理をせずに続けていきましょう!プレーの前には準備運動を忘れずに。関節に異常を感じたらすぐに中止して関節内出血に対する対処を考えましょう。

スポーツのよいところ

スポーツには次のようなよいことがあります。
・強くなった筋肉で関節が守られ、関節を出血から守ることにつながります。
・楽しくスポーツをすることでストレスの解消につながります。
・自己効力感(自信・プライド)を高めることにつながります。
・生活習慣病の予防につながります。

スポーツを始めたい!と思ったら、思い立った日が吉日です。
①どんなスポーツに興味があるか?
②そのスポーツができるかどうか?
③どのような条件ならできるか?
④そのスポーツをして出血した場合
について、主治医や理学療法士と相談し、自分に適して楽しくできるスポーツをみつけてゆきましょう。

こういうスポーツをしたいと思ったとき ベーシック編

スポーツの種類 負担の強さ 楽しみ方
1人で 2人で チームで
ウォーキング ★☆☆☆☆
太極拳 ★☆☆☆☆
ゴルフ ★☆☆☆☆
水泳 ★☆☆☆☆
ハイキング ★★☆☆☆
サイクリング ★★☆☆☆
社交ダンス ★★☆☆☆
ヨガ ★★☆☆☆
釣り ★★☆☆☆
スキューバダイビング ★★★☆☆
バドミントン ★★★☆☆
テニス ★★★☆☆

こういうスポーツをしたいと思ったとき アドバンス編

ここからはアドバンス編になります。始める前に、医師とよく話し合って、「どこまでできるか」を確かめながら取り組みましょう。

スポーツの種類 負担の強さ 楽しみ方
1人で 2人で チームで
ジョギング ★★★☆☆
野球・ソフトボール ★★★★☆
サッカー・フットサル ★★★★☆

スポーツ前の準備

●凝固因子製剤の輸注をしましょう

定期補充療法をしている場合
  • ・輸注日であれば、いつものように朝注射しましょう。
  • ・輸注日でなければ、その日の活動内容を考慮して、輸注するかどうか決めましょう。
定期補充療法をしていない場合
  • ・必ず予備的補充療法をしましょう。

●準備運動(ウォーミングアップ)と整理運動(クーリングダウン)

  • ・スポーツをする前後の準備運動と整理運動は必ず行いましょう。

●無理は禁物

  • ・決して無理をせず、自分のできる範囲で楽しみながら行うことで、続けることが楽しくなります。

●定期的な検査を受けましょう

  • ・出血の部位や程度、回数を注意深く観察するとともに、関節の状態について定期的な検査を受けましょう。

やめることも“勇気”

好きなスポーツを始めたとき、出血回数が増えたり、関節の症状が悪くなったりしたときは、主治医に相談しましょう。スポーツのメニューを軽くしたり、そのスポーツをあきらめたりする必要が出てくるかもしれません。
いったん始めたスポーツをやめることは、非常につらいことですが、関節を守るためには、やめる勇気はとても大切です。
そのスポーツを続けられる方法は他にもあるかもしれません。運動する時間や頻度を変えたり、チームスポーツであれば違うチームを探したりするのも一案です。主治医や周囲の人と相談してみましょう。

大切な準備運動と整理運動

年齢を重ねるほど、準備運動(ウォーミングアップ)と整理運動(クーリングダウン)はとても大切です。ここでは準備運動、ストレッチ、整理運動を紹介します。

●肩のストレッチ

伸ばした腕を反対側の腕で胸の方にひきつけます。
肩の関節の後ろ側がつっぱる感じがしたら30秒保ちます。
反対側も同様に行います。

ポイント

肩の関節が柔らかくなり、投球動作やスイングなど腕の動きが楽になります。肩のけがを予防する効果もあります。

適したスポーツ

水泳、太極拳、ヨガ、ゴルフ、釣り、テニス、バドミントン、野球・ソフトボール

●腕と背中のストレッチ

片手で反対側の肘を持ちます。
肘を耳に近づけ、さらに、上半身も横に曲げます。
二の腕から脇までの部分がつっぱる感じがしたら30秒間保ちます。
反対側も同様に行います。

ポイント

肩の関節や体幹が柔らかくなり、投球動作やスイングなど腕の動きが楽になります。肩のけがを予防する効果もあります。

適したスポーツ

水泳、太極拳、ヨガ、ゴルフ、釣り、テニス、バドミントン、野球・ソフトボール

●腰と背中のストレッチ

仰向けになり、片手を上げます。手を上げた反対側に足を図のように持っていきます。
手を上げた反対側の手で膝を押さえ、背中から腰にかけてつっぱる感じがしたら30秒間保ちます。
反対側も同様に行います。

ポイント

肩の関節や腰部が柔らかくなり、投球動作やスイングなど腕の動きが楽になります。肩や腰、背筋のけがを予防する効果もあります。

適したスポーツ

水泳、太極拳、ヨガ、社交ダンス、ゴルフ、サイクリング、釣り、ハイキング、テニス、バドミントン、野球・ソフトボール、サッカー・フットサル、ジョギング

●腰と太もものストレッチ

うつぶせになり、肘をついて上半身を起こします。
この姿勢で余裕がある場合、両膝を曲げてみましょう。
腰や太ももの前側につっぱる感じがしたら30秒程度保ちます。
この際、腰をそらそうと力を入れず、腰はなるべく力を抜いてリラックスするようにしましょう。
痛みやしびれが出た場合は運動を中止してください。

ポイント

脊椎や股関節が柔らかくなり、背中や腰を反らす動きが楽になります。
腰の痛みを予防したり改善したりする効果もあります。

適したスポーツ

すべてのスポーツ

●股関節のストレッチ

台にのせた足に体重をかけ、へそを前方に移動させます。
後ろ側の足の付け根につっぱる感じがしたら、30秒間保ちます。
反対側も同様に行います。

ポイント

股関節が柔らかくなり、歩幅を大きく歩くことが楽になります。股関節の痛みを予防したり改善したりする効果もあります。

適したスポーツ

水泳、太極拳、ヨガ、ゴルフ、サイクリング、ハイキング、テニス、バドミントン、野球・ソフトボール、サッカー・フットサル、ジョギング

筋トレを行えば、さらにスポーツを楽しめます。筋トレについては、こちらをご覧ください。

関節に出血が始まったと感じたら

例えばこのような症状があったときは…
・動かさなくても関節が痛い
・動かしたときに関節が痛む
・関節部分に熱感があったり、腫れたりしている

 

  • 1. すぐに中止してできるだけ早く凝固因子製剤の注射を行いましょう
  • 2. 凝固因子製剤を注射した後は、RICEを行いましょう

RICEは、関節の出血の症状を軽くしたり、再度の出血を防ぐ助けになったりします。
Rest(安静)
Ice(冷却)
Compression(圧迫)
Elevation(挙上)

 

 

※一部を除き、数字、組織名、所属、肩書等の情報は2022年7月時点の情報です。

JP22CH00016

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