インヒビターとは

 [インヒビターとは?]    [インヒビター患者さんのライフスタイル]
 

インヒビターとは、第VIII因子あるいは第IX因子を攻撃してしまう、血液中にできる抗体のことです。私たちの体に細菌やウイルスが侵入すると、それらを攻撃するための抗体が作られます。これは異物を排除し、健康に保とうとする免疫システムです。同じような理由で、血友病の患者さんの体は、注射した凝固因子を異物とみなしてしまい、抗体(インヒビター)を作ってしまうことがあります。いったんインヒビターができてしまった患者さんは以下のように特別な治療が必要になることがあります。
 

●インヒビター患者さんが出血したときの治療法

インヒビター量が非常に少ない場合には、第VIII因子や第IX因子がまだ有効です。
一方、インヒビター量が多いときには、表のように別の治療薬を用います。


表:インヒビター患者さんの出血時の治療薬 一覧

種類 商品名 用法・用量
遺伝子組換え活性型第VII*因子製剤 ノボセブン 初回 90μg/kgを、その後は症状に応じて60~120μg/kgを2~3時間間隔で投与
活性化血液凝固因子抗体迂回複合体(活性化プロトロンビン複合体)製剤

ヒト血漿由来、複数の凝固因子(特にXa、VIIa、II*)による止血が期待できる
ファイバ 50-100単位/kgを8 ~12時間間隔で投与


*凝固因子の番号はふつうローマ数字で表します。VII、X、IIはそれぞれ「7」、「10」、「2」にあたります。
また、ローマ数字の後に書かれている「a」は、活性型の略です。

 

■遺伝子組み換え活性型第VII因子製剤

遺伝子組換え活性型第VII因子製剤は、プロトロンビン複合体製剤や活性型プロトロンビン複合体製剤にも含まれている"活性型第VII因子"のはたらきが注目され、開発されました。遺伝子組換え活性型第VII因子製剤には、第VIII因子や第IX因子は入っておらず、含まれている第VIIa因子の量はプロトロンビン製剤や活性型プロトロンビン製剤よりも大量です。

 

◎活性型第VII因子製剤の作用メカニズム

活性型第VII因子(第VIIa因子)は、血友病患者さんの血液中にも存在します。用法・用量どおりに第VIIa因子製剤を注射すると、血液中の第VIIa因子の量は500倍以上と非常に高濃度になります。このように、高濃度の第VIIa因子を投与すると、少量の第VIIa因子では現れない、新しい止血の作用機序が期待できます。
血が固まるしくみ」にも述べましたように、血友病の患者さんでも正常な一次血栓が作られます。しかしながら、血友病の患者さんでは、弱いフィブリンメッシュしか作れません。一方、血友病患者さんに遺伝子組換え第VIIa因子を投与すると、血小板の上で第X因子を第VIIa因子が直接活性化させて凝固を進め、強固なフィブリンメッシュが作られます。
このときには第VIII因子や第IX因子は必要としません。したがって、血友病の患者さん
でも一次血栓の上に、たくさんのフィブリンをつくることができると考えられています。
 


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◎遺伝子組み換え第VIIa因子の投与方法

遺伝子組換え第VIIa因子製剤は、添付された溶解液全量を用いて溶解し、2~5分かけて静脈内に注射します。

注射量は、体重から計算します。初回投与量は体重1kgあたり90マイクログラム(μg)*です。これは、体重1kgあたり0.15mLに相当します。2回目からは、出血の種類や程度に応じて、体重1kgあたり60~120μgの範囲で量を調節します。 *1μgは1mgの1000分の1です。

 

出血を止めるためには、血液中の遺伝子組換え第VIIa因子の量が一定以上必要です。遺伝子組換え第VIIa因子は血液中に入ると、約3時間で半分くらいの量になります。そのため、2~3時間おきに注射が必要です。しっかり出血を止めるためには、時間を守って注射をしてください。
また、15歳以下の患者さんでは、血液中で遺伝子組換え第VIIa因子が減っていく時間が短いことがわかっています。

2~3時間おき

海外で行われた臨床試験では、在宅で治療するような軽度から中等度の出血で、止血に必要な注射回数は、平均2.2回でした。止血ができた後、効果を維持するためにもう1回注射をする必要があります。重症の出血の場合は、注射回数と日数を増やして使うことができますが、在宅で治療している場合、医師に相談しましょう。


 

●インヒビターをなくすための治療

ここまでにご紹介した治療法は、止血のための治療法でしたが、インヒビターを永遠になくしてしまうための方法として、"免疫寛容療法"という治療法があります。この方法では大量の第VIII因子(血友病Aの患者さん)あるいは第IX因子(血友病Bの患者さん)を毎日あるいは2~3日おきに注射することで、抗体の産生をおさえます。

 


JP/HG/0617/0004