精製とウイルス処理

◆ イオン交換クロマトグラフィー(陽イオン交換カラムを例として)


クロマトグラフィーとは混合物を、分離・分析する技術です。まず、クロマトグラフィーというものを説明しましょう。クロマトグラフィーの歴史は、1906 年ロシアの植物学者 ツヴェート が植物色素を分離したのが初めだそうです。
抽出した植物色素を、カラム(ガラス管の中に炭酸カルシウムを詰めたもの)の上に置き、上から石油エーテルを流したところ、色の異なる吸着帯として分離されました。このことから「色を記録する」という意味で、ギリシャ語のChroma(色)とGraphos(記録)より Chromatography(クロマトグラフィー)と呼ばれるようになりました。
クロマトグラフィーは、固定相(ツヴェートの実験では炭酸カルシウム)と移動相(石油エーテル)と呼ばれる二つの相が平衡状態にあり、そこを試料(植物色素)が流れます。試料は移動相に乗って流れていきますが、試料中の各成分がこの二つの相(固定相と移動相)とそれぞれ相互作用ながら流れていくので、各成分に流れる時間の差が生じます。そして、それぞれの成分が分離していくのです。

さて、イオン交換クロマトグラフィーですが、物質のプラス(+)またはマイナス(−)の性質を利用します。試料がプラス(+)の性質を持っているとしたら、固定相をその逆のマイナス(−)性質の物質とし、試料を固定相に流し吸着させます。その後、吸着させた試料よりもっと固定相に吸着しやすい物質を流すと、今まで吸着していた試料が後からきた物質に負けて流れ出ます。これがイオン交換グラフィーです。

イオン交換クロマトグラフィーの工程ではクロイツフェルト・ヤコブ プリオン(CJD病原体)も除去されます。


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◆ イムノアフィニティクロマトグラフィー(モノクローナル抗体による精製)


生体成分には特定の成分どうしが結合する性質があります。この性質を利用し、生体の成分を分離する方法がアフィニティークロマトグラフィーです。そして抗原抗体反応を利用したものを特にイムノアフィニティクロマトグラフィーと呼びます。

例えば、凝固因子(抗原)と因子の特定部位だけを認識するモノクローナル抗体の場合、モノクローナル抗体を固定相に吸着させておき、凝固因子を流すと、凝固因子はモノクローナル抗体に結合し他の不純物は流れ出ます。次に凝固因子とモノクローナル抗体との結合を弱める(切る)ような溶液を流すと、凝固因子は溶出されます。このようにして、凝固因子を不純物から分離します。

この工程ではクロイツフェルト・ヤコブプリオン(CJD病原体)も除去されます。


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◆ S / D処理(Solvent / Detergent 処理)

有機溶媒 (Solvent) と界面活性剤 (Detergent) でウイルスの膜を壊し、感染性をなくす方法(ウイルスの不活化)です。この処理は膜を持つウイルスに有効で、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、エイズウイルス(HIV)を不活化します。

 


◆ フィルターろ過

凝固因子が通り、ウイルスが通らない大きさの穴の膜を通し、凝固因子だけを取り出します。不要な細胞の破片なども通過しません。穴の大きさは目的とする凝固因子の大きさによって違います。

 

◆ 加熱処理

ウイルスを不活化する(感染性を失わせる)のに効果的な方法として加熱処理があります。液状加熱処理は液体の状態で60℃10時間という比較的低い温度での加熱処理を行う方法です。低温加熱処理は、フランスの細菌学者であるルイ・パスツールがワインの変質を防ぐために考案した殺菌方法がもとになった低温殺菌方法でパスツライゼーションとも呼ばれています。B型、C型肝炎ウイルスなどが不活化されます。
また、血液凝固因子の中には熱に弱いものもあるため、液状ではなく凍結乾燥(フリーズドライ)したものを、60-65℃の温度で72-96時間加熱するという乾燥加熱処理という方法もとられています。


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JP/HG/1216/0006