関節症

監修 産業医科大学小児科 酒井道生
 

 凝固因子製剤などの治療法が普及した現在においても、関節症はQOL(生活の質=quality of life)に関わる重要な問題です。血友病性関節症は、基本的には不可逆性(進行することはあっても、治ることはない)ですので、まずは関節症を発症させ ないように、そして、もしも関節症を発症してしまった場合にはそれ以上関節症を進行させないように対策を立てることが大切です。

 まず始めに、血友病性関節症とは何かを簡単に説明します。関節とは、骨と骨をつなぐ継ぎ手部分のことを指します。おおざっぱに言うと、関節は、骨と骨を つなぎ止める靭帯(じんたい:腱を意味する医学用語)と、クッションの役割をする関節滑膜(かんせつかつまく)から成り立っています。関節滑膜は袋状の構 造をしていて、その袋状の内腔のことを関節腔(かんせつくう)と呼び、中に関節液という液体が入っています。この関節腔に出血するのが関節内出血であり、 関節内への出血を繰り返すことにより、関節滑膜から関節全体が徐々に破壊されていく状態を血友病性関節症と呼びます。つまり、血友病性関節症の発症および 進行には、関節内への出血の繰り返しが大きく関与します。主な症状は、関節の痛みと可動域(関節を動かせる角度の幅のことをこう呼びます)の制限です。

 次に、血友病性関節症はどういった関節にみられるかというと、慢性関節リウマチなどとは違って、指や趾(足の指)といった小さな関節に発症することは稀 で、ひじ、肩、ふとももの付け根、ひざ、足首といった大きな関節によく起こります。中でも、足関節に最も多く、次いで、ひざ、ひじ関節の順に多くみられま す。また、血友病性関節症の評価ですが、現在は、各関節のレントゲン写真所見により評価するのが一般的です。勿論、各関節の可動域、四肢の周囲径(太さ) や筋力も参考にします。最近では、一部の施設で、MRI検査や超音波検査による評価も行われており、より早期の関節症の診断が可能と言われています。

 以上からわかるように、血友病性関節症の発症および進行の防止には、関節内出血のコントロールが重要になります。出血時には速やかに凝固因子製剤の投与 を行うとともに、関節を安静に保つことが重要(*を参照)です。なお、不適切な長期の安静は筋力の低下を招き、かえって関節内出血を繰り返しやすくなりま すので、出血時にはどの程度の期間の安静が必要かをその都度主治医の先生とよく相談することが大切です。また、年に1回程度、レントゲン写真などにより関 節の状態を評価しておくことをお勧めします。

* 関節内出血時に必要な処置として、RICE(ライス)を覚えておいて下さい。

Rest:安静にすること
Icing:患部を冷やすこと
Compression:圧迫((弾性包帯等による)出血部位全体の圧迫止血)
Elevation:挙上(出血部位を心臓より高くすること)
 


家庭治療には、わざわざ病院に行かなくても注射ができるという以外に、出血時にすぐに注射ができるという利点があります。本人の受け入れや血管確保などの 技術的な問題が絡んできますが、可能な限り早期に習得したい手技です。また、定期的補充療法には、出血させないという理想的な効果が期待できます。北欧な どでは、1−2歳から定期的補充療法を開始し、関節症の発症予防効果があったと言われています。何歳から定期的補充療法をすべきかは難しい問題ですが、我 が国でも血友病の専門家の間で検討が進められています。
 




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