やりたいことを叶えるために ~ライフスタイルに合わせて、病気と向き合う~

 血友病は製剤や治療方法の開発により、かつては運動や仕事をあきらめたり、制限しなくてはならなかった患者さんも「やりたいこと」を叶えられる時代に突入しました。やりたいことを実現し、自分らしい人生を送るためにはライフスタイルやライフイベントと、製剤が効率よく用いられているかの関係が重要になります。

  


◆定期補充療法と向き合う輸注のタイミングと活性レベル

  定期補充療法とは、足らない凝固因子を日常定期的に補充する止血管理方法です。週に何回、あるいは何日おきかに輸注をすることで、患者さんの凝固因子活性レベルを一定以上に保ち出血のリスクを減らすことを目的とした治療法です。

  この定期補充療法ですが、いつ輸注をするかのタイミングによって製剤の活性レベルに高低があります。例えば、月・水・金の朝に定期補充を行っている場合、輸注をした月曜の朝はとても活性は高いですが、次の輸注の前の晩、火曜日の夜は活性レベルは低くなっています。そして週末に近づき金曜の朝に輸注をしても日曜日夜は、輸注から2日経っているのでいつもより活性レベルが低くなります。

  「自分はバイトとクラブ活動が月水金にあるから」と月・水・金の朝の輸注をするのがよいタイミングとすると、「日曜の夜はコンサートに行く」など臨時のイベント時には活性レベルが低くなり出血のリスクが高くなることがわかります。

  


◆血友病性関節症と向き合う:筋力をつける

  血友病患者さんの多くが悩んでいる関節症。同じ関節に出血を繰り返すうちに関節に障害をきたし、動きが制限されたり、痛みを伴ったりと日常生活に支障をきたすようになります。

 関節症を予防するには、出血を感じたらすぐ製剤を輸注する、定期補充によって出血を起こさないようにする、といった日頃の心がけが重要です。血友病では出血を恐れるあまり運動は敬遠されがちですが、適切な運動は、骨や筋肉を鍛え、関節機能の維持・改善、関節症予防に有効と考えられています。

 リハビリテーションの前に予備的投与をすることで、患者さんや理学療法士の出血への不安も抑えられ、効率よくリハビリテーションを行うことができます。

  


患者リアル voice

 現在は、フリーランスのプランナー/ゲームデザイナーとして活躍する木村さん(仮名)がゲームデザイナーとしてのデビューを果たしたのは、高校2年生の時でした。

「自己承認欲求の塊」と笑う木村さんは、「やりたいこと」を実現するために、血友病とどう向き合ってこられたのでしょう。

  

◆常温で保存ができる、がもたらした活動の変化

  「製剤の変化に伴い、生活パターンが変わることはよく経験してきました」と木村さん。とりわけ、製剤が常温でも一定期間の保存ができるという変化は、大きな影響を与えました。それまでは、薬を病院でもらうとクーラーボックスに入れて大至急自宅の冷蔵庫に向かわなければなりませんでした。

 しかし、常温でもよいとなると急いで家に帰らなくて済みます。「新宿の病院に通っていたので、通院という大義名分のもと、平日の日中から堂々と映画を観たり、趣味のカメラを物色したり …と半日を気楽に過ごすよい口実にしていました。そして、敬遠していた外泊も気負うことなくできるようになりました。

 フットワークが軽くなった反面、用事を断る理由がなくなった、病気を理由にした言い訳がしづらくなった、ということもあります。 10代の終わりくらいの頃です。言い訳ができなくなったからこそ、『自分はなにがしたいのか』を考え、『とりあえずやってみる』ようになりました。」

  


◆青春、仕事を謳歌するあまりの大出血

 「病気を言い訳にするのは格好悪い」「病気だから仕方がない」の間で悶々とした 10代。高校 2年生の時に自身のタイトルのゲームで見事プロデビューを果たしました。この頃の生活は、学校とサークル活動、ゲーム会社でのアルバイトと時には家にも帰らず学校と会社を往復することもありました。杖を突きながら楽器を抱えての学校通いを続けた結果、ついに学校で大出血を起こしてしまったこともありました。

 卒業後ゲーム業界へと進み、 2日に 1回、週3回の定期投与をしていました。しかし、仕事で徹夜が続くと出血。「30代になると関節の痛みが常にありました。出血による痛みか関節炎の痛みかの区別がつかない。関節炎だと思っていたら出血で、気が付いたらパンパンに腫れていたということもありました。」あの時期はコントロールできていたとは言い難いです、と当時のことを振り返ります。

  


◆将来予測で、より精度の高い止血コントロール

  忙しい毎日を過ごしながら、止血管理に苦戦していた当時、主治医から「心配な時は、定期輸注の間で投与を追加してみたら?」というアドバイスを受けました。

 そして、それまでは定期輸注を行っている中でも、出血を感じた時に追加投与を行っていましたが、出血のリスク、例えば今日明日は仕事がかなりハードになるという時は、その日が定期輸注の日でなくても主治医から言われたように輸注を追加するといったようにしました。

 これは木村さんが輸注記録をつけながら、輸注した日と出血で注射をしなければならなかった日を振り返って気づいた自分なりの「よい打ち方の法則」だそうです。

  


いまなんぱー?PK
(android対応アプリ)

輸注をした後の活性値をグラフで表示するアプリ。
グラフ画面で直近の輸注について入力すると、輸注時から今までの活性の変化がグラフで表示され、「今、活性が何パーセント(理論値)なのか」を見ることができる。


自分の輸注記録を見直しながら、輸注後の活性値の推移が分かれば、
活動予定に合わせた輸注タイミングの参考にできるのではないか」と考えて作ったのが、
このアプリなのだそうです。

  

◆やりたいことを実現する輸注のタイミングと活性レベル

 「失敗もあるけど、失敗しなかったこともあるし、と自分にとってなんとなく居心地のよい今までの方法を変えることは、なかなか難しいことです。でも、やりたいことの実現は「自分とどう向き合うか」といった意識の改革が必要なんです。」木村さんは今も「やりたいこと」に挑戦し続けています。

 出血で何日も学校や仕事を休んだり、やりたいことを諦めることができるだけないようにしたいものです。そして、製剤を効率よく用いることができるように、日常のサイクルやライフスタイル、旅行に行く、大きな仕事がある、大事な食事に外出するなどイベントの大きさなども考え、出血を予防できる活性レベルを保つ最適なタイミングと投与量を見直してみましょう。

次回の診療時に主治医の先生に相談してみてはいかがでしょうか。

  





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