血友病治療のガイドライン −インヒビターの診断と検査−

名古屋大学医学部附属病院 血液内科 松下 正

 インヒビターの発生に備えるため、診断と検査方法について英国ガイドラインの考え方を紹介します。
日本でも現在インヒビター治療法のガイドラインを作成中ですが、2006年に改定された英国血友病センター医師会(United Kingdom Haemophilia Centre Doctors Organisation:UKHCDO)の血液凝固第VIII因子、第IX因子インヒビターのガイドラインから診断に関する部分を例として紹介します。
 


第VIII因子および第IX因子インヒビターの診断と管理:英国血友病センター医師会ガイドライン(British Journal of Haematology, 2006, 133, 591-605)より
第VIII因子および第IX因子インヒビターの診断と検査に関する勧告

●血友病AおよびBの患者、特に新たに診断された患者では、全例で第VIII因子および第IX因子の変異解析を行うべきである。
―― グレードB、レベルII b (レベルII bのエビデンスに基づくグレードBの推奨)

●定期補充療法を行っている患者におけるインヒビターの検出は、トラフ値(製剤投与直前の活性値)を測定するか、あるいは半減期を推定して行うことができ る。トラフ値が1 IU/dL未満か、回収率が不十分な場合は、感度の高いインヒビターのスクリーニング法を用いるか、Bethesda法のNijmegen変法(インヒビ ター値を測定する方法)を用いてスクリーニングを行うべきである。
―― グレードC、レベルIV

●出血時(オンデマンド)補充療法を行っている患者では、感度の高いスクリーニング法を用いるか、Bethesda法のNijmegen変法を用いてインヒビターのスクリーニングを行う。
―― グレードC、レベルIV

●重症型および中等症型血友病Aで過去に治療歴のない患者では、投与日数20日までは投与5日ごと、投与日数150日までは3~6ヵ月ごと、その後は12ヵ月ごとにインヒビターのスクリーニングを行う。
―― グレードC、レベルIV

●出血の頻度が増加するか、補充療法に対する効果が弱い場合には、手術など外科的処置を行う前にもインヒビターのスクリーニングを行う。
―― グレードC、レベルIV

●軽症型血友病Aでは、特に高リスクの突然変異のある患者では、集中的な補充療法後にインヒビターのスクリーニングを行う。
―― グレードB、レベルIII

●重症型または中等症型血友病Bでは、インヒビターのスクリーニングの頻度は血友病Aの場合と同程度行う。インヒビターの発生が高リスクの突然変異の患者か、変異解析を受けていない重症型血友病B患者では、FIX製剤の最初の20回の投与は専門施設で行う。
―― グレードB、レベルIII

●Bドメイン欠損FVIII製剤(日本では発売されていません)の活性測定は発色法または特異的な標準品を用いた1段階の分析法を用いて測定する。
―― グレードB、レベルII b

●新規インヒビター発生症例は中央のNational Haemophilia Databaseに報告されるべきである。
 


 今回ご紹介した英国のインヒビターガイドラインは、そのままわが国でも直ちにあてはめることができないものもありますが、このようにしっかりと作られた ガイドラインは医療現場の判断を支援するものと言えます。また、英国では医師向けの臨床所見を患者向けに書き直したBest Treatment というWebサイトがあります。このサイトには医療情報を理解するために大切な基本事項が解説されています。よりよい治療を行う、受けるためには医師の知 識や経験、そして患者さんの理解が必要ということでしょう。
 




JP/HG/0617/0004