2004年世界血友病連合総会

東京医科大学 臨床検査医学 天野 景裕

世界血友病連合(以下WFHと略します)は、世界的な血友病の患者組織です。血友病であるアイルランド人のブライアン・オマホニー氏が1994年から10 年間会長として尽力され、2004年11月からはアメリカ人のマーク・スキナー氏が会長となりました。WFHの総会は2年に1回、違う国で開催されてお り、日本では1976年に京都で行われました。2004年はタイ王国のバンコクで10月の5日間にわたって行われ、およそ200の講演、900の論文が発 表されました。

バンコクはちょうど雨期から乾期に変わり気温は高いものの、過ごしやすい天候でした。参加者は120カ国3600人を越し、医師、看護師、理学療法士(リ ハビリテーション)などの医療関係者だけでなく、患者さんや家族、心理、学校教育、NPOの関係者など、血友病に関わる様々な方々が全世界から参加してお り、情報交換が活発に行われました。毎回、血友病の基礎医学的なものから、治療法や治療経験、サマーキャンプやスポーツへの参加などの学校教育の問題点な どいろいろな分野で発表は行われています。

今回、話題となっていたことをいくつか紹介します。

(1) インヒビターは血友病治療において、まだまだ困難な合併症のひとつです。インヒビターが、いつ、なぜ発生してしまうのかは、まだ解明されていませんが、最初の注射の年齢によってインヒビターの発生率に違いがあるかどうかについての報告がありました。

ドイツやカナダでは最初の注射の年齢が低いほどインヒビターの発生率が高くなり2歳以降にはじめて注射した場合、発生率はかなり低くなると報告されまし た。しかし、イタリアやブラジルの研究では差はありませんでしたし、カナダでも2歳まではVIII因子もIX因子も含まない遺伝子組換え活性型第VII因 子製剤で治療を行うことを試みたようですが、今のところインヒビターの発生率には差は出ていないようです。

一方、なるべく年齢の低いうちから定期注射を行うことで関節症の発生を抑えようという考え方もあり、まだ、いつから凝固因子製剤の注射を始めるべきかの結 論はでていません。いまのところは、インヒビターの発生率を考えるよりも出血早期の補充療法を優先的に考えておいたほうが良いだろうと思われます。

 

(2) インヒビターに対する免疫寛容療法の国際研究についての中間報告があり、概ね良好な結果が出ているようです。インヒビターが発生してから、なるべく早くに免疫寛容療法を始めたほうが効果は高いというのが、多くの専門家の意見でした。

 

(3) 新しい製剤の開発についての報告もありました。注射をしてからなるべく長い間、因子が血液 中からなくならずにいればそれだけ出血時の効果も予防効果も高まりますし、なんといっても注射をする回数を減らすことができます。基礎的な研究により、 「どのように、VIII因子が血液中からなくなっていくのか?」のメカニズムがいくつか解明されてきており、そこをブロックすることで効果が長引くように 変化させたVIII因子の作製が試みられています。また、VIII因子を守るような物質をつけた製剤をマウスに注射したところ半減期が2倍になったという 報告もありました。安全でより効果的な製剤が早く開発されるといいですね。


WFH総会に参加すると開発途上国や先進国のそれぞれの医療事情にあわせて血友病を取り巻く環境は異なっていることを実感させられます。世界のみなさんが 同様により良い血友病医療環境が整えられるように、血友病専門医として、今後もなるべく参加していきたいと考えています。

次回は2006年5月21〜25日カナダのバンクーバーで開催されます。まだ詳細は発表されていませんが、だいたい患者さんやその関係者の参加費用は米ドルで100〜200ドルです。登録時期によって参加費用が異なりますので、今後WFHのホームページでご確認ください。WFHでは各国の患者会のブースなどもありいろいろなイベントを催したり、写真のようなバッジを手に入れることもできます。
 


私はこのバッジを病院の名札に付けています。以前、海外から出張で日本に来られた患者さんが来院された時に、このバッジを見てとても安心してくれました。
 


WFHは血友病の勉強ばかりではありません、あなたも一度参加してみてはどうですか?
 




JP/HG/0617/0004