出血と「こころ」「気分」出血の初期症状を考える

宮城教育大学 障害児教育講座 村上 由則

  子どもさんの様子を見ていて、「ソワソワした落ち着きの無い様子」、あるいは「妙にハイテンションな後に、出血が よくおきるな」といった、子どもさんの「こころ」「気分」の変化が、出血を引き起こす原因になっているのではないかと感じる方も多いようです。しかし、 「こころ」の状態が出血を引き起こすことはないと言ってよいでしょう。では、お父さんお母さんの疑問は、どう考えるべきなのでしょうか?

1.「意識するこころ」と「無意識のこころ」

 身体の中に張り巡らされた神経のセンサーは、身体面で起こる「重苦しい」「もやもや」などの嫌な感じを「出血かもしれない」という情報として早い段階で脳に伝えています。出血によって生じる関節や筋肉内部のわずかな変化、それが嫌な感じ=違和感です。
違和感は、例えば足全体や腕全体というように広い範囲に現れ、その後だんだんと出血症状が分かる関節など、特定の場所の痛みや腫れとしてはっきりしてくるのです。この身体の違和感「嫌な感じ」は出血発生の「初期状態」と考えられます。
 

 脳の働きである「こころ」には、大きく二つの面があります。自分の行っていることや感じ取っていることをそのまま理解している「意識するこころ」と、自分に都合よく修正を加える「無意識のこころ」です(図1参照)。


 この働きは大人も含めだれにでもあるものです。これまでの経験から、子どもさんにとって出血することはとても嫌なことです。「出血かも知れない」と思う 「意識するこころ」と「いやいや大丈夫」という「無意識のこころ」の働きが、ぶつかり合うことになり、「無意識のこころ」は出血に気づかないふりをして、 子どもたち自身をちょっとだけ騙すこともあります。これが、理由のよく分からない「ソワソワした落ち着きの無い様子、妙なハイテンション」となって現れま す(図2参照)。
 


 つまり、子どもさんの行動の「様子」「気分」の安定しない状態は、他に理由が思い当たらなければ、出血初期の症状と見ることができるのです。

2.違和感と落ち着きのなさから出血を早期に知る

 これまで述べたように、「違和感」や「気分」の不安定は、実は出血発生の初期段階の信号と言えます。ならば、出血を早期に認知するためにこの信号を活用することができそうです。行うべきことは、次の2点です。

 一つは、出血が確認された段階で、子どもさんの感じた違和感や気分を聞き、様子を簡単に記録しましょう。注射の記録に一緒にメモすればよいのです。できれば出血の有無に関わりなく、お子さんに何らかの変化が見られた時にはその様子を簡単に日記に付け、その日の「気分」を顔マークで記録してはいかがでしょうか?

 二つ目として、子どもさんが「違和感」「気分」の不安定なことを自覚し、出血したかも知れないと、お父さんやお母さんに伝えてきた時に、「出血したこ と」を叱ったりしないことです。もしも叱ったりすれば、「無意識のこころ」が強く働き、次からは「違和感」「気分」の不安定などの初期症状を打ち消してし まい、早期に出血を認識することが難しくなってします。逆に早く気づいたことを褒めてあげましょう。すると、「無意識のこころ」は、初期の段階に出血を知 ることを妨害しなくなり、治療も早まり後遺症の予防にもつながります。

3.神経質にならないために

 落ち着きなく動き回ることや、何か楽しいことがあるとテンションが上がることは、子ども本来の姿であり、多くの場合には問題にするべきことではないで しょう。親はあまり神経質にならず、それでいて細やかな配慮が必要です。日常のメモは、出血時とそうでない時の違いがわかる手助けとなるでしょう。

※ニュースレター12号「自然出血」はなぜ起こる?も合わせてご覧ください。
 




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